#6気候変動その2 N2/Labワークショップ 報告
日時:9月10日(土)13時 〜 11日(日)15時(2days)
場所:スペース七番(現地開催)
主催者:N2/Lab(錦二丁目エリアプラットフォーム)
テーマ:「気候変動その2」
【コーディネーター】東京大学都市計画研究室
今回のテーマは、今年2月に実施したワークショップに引き続き「気候変動」。前回のワークショップで議論した気候変動適応のアイデアをもとに、錦二丁目の温熱環境の測定と分析(1日目)、そしてこれからの都市デザイン(2日目)を行う2日間の演習型ワークショップを実施しました。今回は現地開催とし、2日間で22名の方々にご参加いただきました。
前回のワークショップの報告はこちら:https://n2-lab.jp/report/report-778
プログラム
【1日目(9/10 13時~17時)】
第1部 気候変動に適応するまちづくりのためのレクチャー
第2部 温熱・物的環境調査のフィールドワーク
第3部 調査結果の整理と考察
【2日目(9/11 10時~15時)】
第1部 都市デザインのグループワーク
第2部 成果発表
【1日目】第1部 気候変動とまちづくりに関するレクチャー
(司会:東京大学都市計画研究室 村山顕人准教授)
1日目のはじめに、気候変動に適応する錦二丁目の都市デザインに向けて3名の講師にレクチャーを行っていただきました。
◆「名古屋の環境・錦二丁目のまちづくり」 森田紘圭さん(N2/LAB)
1人目、森田さんのレクチャーでは、錦二丁目のまちづくりの歴史、そして名古屋の昨今の気候推移についてご紹介いただきました。今回のワークショップは市外からの参加者も多いので、錦二丁目の活動内容について共有します。
◆「気候変動に適応する都市デザインに向けて」 山崎潤也研究員(東京大学都市計画研究室)
2人目、山崎研究員のレクチャーでは、気候変動適応のまちづくりに関する最新の研究成果をご紹介いただきました。都市計画研究室では錦二丁目の暑さを可視化するシミュレーションを行っており、その成果は今回の都市デザインにも役立ちそうです。
◆「まちなかの暑さ対策について」 嵐涼輔さん(環境情報科学センター)
3人目、嵐さんのレクチャーでは、まちなかの暑さ対策に重要な視点、そして暑さの実測機器の使い方についてご解説いただきました。このレクチャーをもとに、第2部ではフィールドワークでまちの気温や表面温度を測定します。
【1日目】第2部 フィールドワーク(温熱・物的環境調査)
続いて、参加者が6つのグループに分かれ、外に出てフィールドワークを行いました。9月にも関わらず夏のような暑さで、温熱環境調査にはちょうどよい天気となりました。
温熱環境調査では、専門の機器を使ってまちなかのWBGT(湿球黒球温度)を測定しました。WBGTとは気温・湿度・放射熱を組み合わせた指標で、熱中症の危険性を測る指標としても使われます。また、サーモグラフィーカメラでは道路や建物の表面温度を測定しました。まちなかの暑さを把握するためには、気温だけでなく様々なことを考える必要があります。
続いて物的環境調査では、まちなかの街路樹やアーケードの位置や高さを記録しました。夏の屋外の暑さを改善するためには直射日光を遮ることがとても重要なので、日向の多い場所、日陰の多い場所を知っておくことは2日目の都市デザインにつながります。
【1日目】第3部 調査結果の整理と考察
1日目の最後は、フィールドワークの調査結果をまとめました。各グループが調査した内容を錦二丁目の模型に表現し、まちの現状の課題を整理しました。
まちの課題を可視化するために、サーモグラフィーカメラの写真を印刷して模型に置いていきます。サーモ写真は黄色い場所ほど表面温度が高いことを示すので、日光が当たっているところが一目でわかります。表面温度が高い場所の近くは人間の体感温度が高まるため、日陰を作る、壁面緑化するなどの対策が必要です。
フィールドワークの結果を各グループが発表して、1日目は終了です。これを踏まえて、2日目の都市デザインに臨みます。
【2日目】第1部 都市デザインのグループワーク
2日目はいよいよ都市デザインです。参加者が3つのグループに分かれ、これからの気候変動に適応するための錦二丁目の将来設計を行いました。
都市デザインの対象場所は、錦二丁目の中央4街区を区切る道路空間「グリーンクロス」に加え、7番街区の会所空間です。グループはそれぞれ6~7人で構成し、グループAが7番街区、グループBが袋町通、グループCが長島町通を担当しました。
前日の調査結果をもとに、各グループがまちの将来像をイメージして形にします。必要に応じてまちの再調査を行いながら、デザインの成果を模型上に表現していきました。
【2日目】第2部 成果発表
2日目のさいごに、都市デザインの成果をグループごとに発表しました。各グループ、模型とプレゼンボードを組み合わせて素晴らしいデザインを提案してくださいました!
◆7番街区 「ビオトープ・遊歩道で”涼”をつくる」
グループAは、7番街区の将来像について短期・長期に分けてデザインしてくださいました。短期的には、会所の快適性を向上させるためのミスト、アーケード、壁面緑化を組み合わせた即効性のある計画を提案。そして長期的には、会所の中央にビオトープを設けることで地域に親しまれる親水空間を設計しました。会所空間の水面は表面温度の上昇をやわらげ、涼しい風を周囲に届けてくれることが期待できます。
◆袋町通 「歩きごこちよい街路」
グループBは、夏の暑さも気にならずに歩けてしまう袋町通をデザインしてくださいました。現在の道路空間を再配分して歩道を広げ、街路樹を再配置することで日陰を創出します。さらに10番街区では環境に配慮した再開発が行われることを想定し、7番街区の会所との動線を意識した新たな公開空地を設計しました。7番と10番をつなぐ会所は風の通り道となり、快適な空間となる可能性が秘められます。
◆長島町通 「歴史の糸を紡ぐ」
グループCは、繊維問屋街として発展した錦二丁目の歴史をつなぐ長島町通をデザインしてくださいました。6番街区の再開発の想定では、公開空地に高低差をつけた「錦の丘」を設計し、画期的な会所空間を提案。さらに歩道空間には錦の産業を活かした「まちにかかるカーテン」を提案し、従来のアーケードに代わる日陰空間を創出。錦の歴史を伝えるデザインは暑熱改善との相乗効果が見込めます。
これらの都市デザインの成果は東京大学都市計画研究室に持ち帰っていただき、温熱環境シミュレーションを実施して改善効果を分析していただきます。その結果は後日、N2/LABのイベントで報告していただく予定なので、その際には皆さまぜひ再度お集まりください。
ご参加・ご協力いただきました皆さま、本当にありがとうございました!