N2/LAB 錦2丁目エリアプラットフォーム

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2022.03.02

#5気候変動その1 N2/Labワークショップ 報告

日時:2月22日火曜日 18時半~20時半

場所:オンライン(Zoom)

主催者:N2/Lab(錦二丁目エリアプラットフォーム)

テーマ:「気候変動その1」

【話題提供者】東京大学都市計画研究室

 

今回のテーマは、近年の世界的な課題となっている「気候変動」。東京大学都市計画研究室の村山准教授、山崎研究員の話題提供のもと、気候変動による夏の暑さや集中豪雨に適応するためのアイデアについて、参加者の皆様と意見交換しました。今回はオンライン開催とし、約40名の方々にご参加頂きました。


プログラム
1. レクチャー①:気候変動は私たちの暮らしにどう影響するの?
2. ワークショップ①:身近な暮らしへの気候変動の影響を深堀りしよう!
3. レクチャー②:錦二丁目の夏の暑さは将来どうなるの?
4. ワークショップ②:夏の災害レベルの暑さを乗り越えるアイデアを議論しよう!
5. まとめ


 

1. レクチャー①:気候変動は私たちの暮らしにどう影響するの?
(東京大学大学院工学系研究科 都市計画研究室 村山顕人准教授)

 

レクチャー①では、東京大学の村山准教授より、気候変動による私たちの暮らしの影響とそれに対するまちづくりのあり方について講義していただきました。

昨今、世界の平均気温は上昇傾向が続いており、その影響による極端な高温や大雨などの異常気象は日本でも大きな問題になっています。私たちが考えるべき気候変動対策は、それを食い止めるための「緩和策」と、それに備えるための「適応策」に分類できます。錦二丁目のまちづくりにおいても、気候変動の原因となる温室効果ガスの排出を抑えるとともに、将来的に予想される気候変動の影響に適応した暮らし方を模索しなければなりません。今回のワークショップでは、特に「適応策」に着目します。

2011年に策定した「これからの錦二丁目長者町まちづくり構想(2011-2030)」では、まちづくりの目標の一つとして「賑わいと生彩のある環境共生エコタウン」を掲げています。また、現在策定中の「錦二丁目未来VISION」でも、目標の一つとして「SDGs達成を通じてグローバルリスクに強いまちを作る」ことを掲げています。これらの実現のためには、気候変動の「適応策」に取り組むことが欠かせません。

今回のワークショップでは、名古屋の都心部が受ける気候変動の影響を学びながら、これからの気候危機に負けない、しなやかで快適なまちを創るためのアイデアを出し合いたいと思います。


 

2.  ワークショップ①:身近な暮らしへの気候変動の影響を深堀りしよう!

 

ここでは、村山准教授のレクチャーを踏まえて、私たちの暮らしに対する気候変動の影響について意見交換を行いました。「暑さと集中豪雨がひどくなったらどのような問題が起こるか?」という問いに対して参加者の皆様にコメントをいただき、それらをオンライン上の画面で整理しました。

【皆様のコメント一例】
◆暑さがひどくなったら・・・
・熱中症患者が増加する。子供が外で遊べなくなる。
・暑いのが苦手なので、クーラーを夜遅くまで使う。
・人通りがとても少なくなり、商業にも影響が出てくる。(売り上げ減)
・農作物が育たなくなり、都心でも野菜が高くなったり新鮮な野菜が食べられなくなる。
・四季の良さがなくなる。

◆集中豪雨がひどくなったら・・・
・名古屋駅に向かって道路が水没する。
・傘を買う人が多くなり、電車の傘忘れ物が増える。
・豪雨による自動車や自転車の事故増加。
・下水の容量がパンクして逆流してまちが臭い。
・洪水被害の多い街の地価下落。


 

3. レクチャー②:錦二丁目の夏の暑さは将来どうなるの?
(東京大学大学院工学系研究科 都市計画研究室 山崎潤也研究員)

 

レクチャー②では、東京大学の山崎研究員より、錦二丁目の夏の暑さについて実測結果やシミュレーション結果を紹介していただきました。

◆錦二丁目の温熱環境実測の結果

東京大学都市計画研究室では、2021年8月4日~5日に錦二丁目の環境実測を行いました。長者町通りの沿道周辺を中心に4ヶ所の温度、湿度、地表面温度などを測定し、その結果をまとめています。

8月4日の結果をみると、4ヶ所とも日中の気温は33℃から36℃を推移しており、とても暑いことが伺えます。また、さらに驚くことに表面温度は14時の時点で4ヶ所とも50℃を超えており、直射日光を受けたアスファルトや建物屋上の表面がとても熱くなっていることがわかりました。

◆錦二丁目の温熱環境シミュレーションの結果

続いて、錦二丁目のまちなみをモデル上に再現し、温熱環境のシミュレーションを行った結果について紹介します。この技術はCFD(Computational Fluid Dynamic:数値流体力学)という理論を用いたものであり、架空の空間における気体や流体の動きを再現することが可能です。

理論は専門的ですが、ここでは仮想空間の温度をどこでも把握できる技術を使ってみた、という認識で大丈夫です。これにより現在の環境のみでなく、気温上昇が進んだ将来の環境や、まちに適応策が導入された場合の架空の環境をシミュレーションすることができるのです。

この技術を使って、現在の錦二丁目の環境をチェックしてみましょう。2021年8月4日12時の環境をシミュレーションしてみると、相対的に気温が低い場所がわかってきました。例えば、7番街区のプラウドタワー名古屋錦(Ⓐ地点:2022年1月竣工)の公開空地の広場は、直射日光が当たらないこともあり、温まった空気が溜まっていません。また福正院境内なども相対的に温度が低いです。

錦二丁目のまちづくりでは、街区の中央に「会所」の空間を創出することが計画されています。そのような空間が、温熱環境の観点において快適性が良くなる可能性があることが示されました。

また、この技術を使って将来のシミュレーションを行うと、気候変動に伴ってより気温や表面温度が高まることがわかりました。このような環境に備えて、今から適応策を考えていくことが重要です。

◆錦二丁目の暑さ対策を考えるためのヒント

さいごに、まちなかの暑さ対策を考えるためのヒントを紹介します。環境省がまとめているガイドラインでは、対策を施す場所について、人間を基準として「うえ」「よこ」「した」「まんなか」に分類しています。「うえ」の対策には樹木・藤棚や人工日除けの設置、「した」の対策には地表面の保水化や緑化が効果的です。これらのヒントをもとに、まちの構造や資源を活用した錦二丁目の暑さ対策について考えていきましょう。


 

4. ワークショップ②:夏の災害レベルの暑さを乗り越えるアイデアを議論しよう!

 

ここでは、山崎研究員のレクチャーを踏まえて、夏の災害レベルの暑さを乗り越えるためのアイデアについて意見交換を行いました。「暑さを乗り越えるためにできることは?今すぐから2090年まで!」という問いに対して参加者の皆様にアイデアをいただき、それらをオンラインの画面で整理しました。

【皆様のアイデア一例】
◆「うえ」の対策
・植栽で木陰を多く作る。
・主要導線に冷却ミストを設置。
・屋根を作って日差しを遮り、ミストによるウォータースプラッシュ。
◆「した」の対策
・錦二丁目にたくさんある駐車場を緑化する。
・保水舗装道路として道路の木質化。
・雨水を活用し、自動で打ち水や緑化に役立てる。
・まちなかに農地を増やす。
◆「よこ」の対策
・高温になっている建物への遮熱塗料の塗布。
・グリーンカーテン。(ゴーヤなど)
◆「まんなか」の対策
・冷たく(感じ)て溶けにくい食べものの開発。
・遮熱衣料:外気温にあわせて肌への温度が変わる服。
◆その他全般
・リアルタイムで涼しく歩けるルートを探すアプリの開発。
・建物も鉄道へもすべて地下でつなげる。(名古屋市都心)
・風鈴とか水の流れる音や映像など、納涼を意識させる設備の導入。
・温熱を電気に変える装置を屋上や路面に設置。
・脱炭素、そして涼しい街として街をブランディング。

 

【ショートプレゼン】
続いて、気候変動対策に関する技術をお持ちの参加者の皆様に、アイデアや事例のショートプレゼンをしていただきました。

◆凸版印刷株式会社(鯨岡真由様)

・熱中症リスクのリアルタイム通知
IoT向けの無線通信技術「ZETA」ネットワークの活用により、まちなかに設置した測定器から温度などをリアルタイムで取得し、熱中症リスクをアプリに通知する。

◆UR都市機構(須藤弘臣様)

・自然環境と調和する空間形成(コモレ四谷(東京都))
隣接する地域のみどりと立体的な連続性を実現するため、地上部の植栽だけでなく約2,200m2の多段状の屋上緑化を実施し、立体的なみどりのつながりを形成。

・微気象を活用したオープンスペースの改善(むつみ台団地(東京都))
一時的に雨水を蓄え、路面温度の上昇を抑制する効果を持つ保水性舗装を利用し、ヒューマンスケールの熱環境(微気象)を活用した屋外空間を整備。

・雨水地下貯留槽の設置(渋谷周辺(東京都)
都市型水害防止のため、土地区画整理事業内で渋谷駅周辺の地下に雨水貯留槽を整備。多量の雨が降った際、一時的に雨水を貯留し、天候回復後に自動排水される施設。

◆株式会社竹中工務店(河崎泰了様)

・人と自然をつなぐ建築・都市
脱炭素社会の実現に向け、ゼロエネルギービル(ZEB)や木造建築の評価・普及促進。また、建築物の外壁素材・窓面の構造を工夫することにより、外部から内部へ伝わる熱を遮断して高断熱建築を実現。

◆錦二丁目エリアマネジメント株式会社(森田紘圭様)

・公共空間の取り組み(錦二丁目)
都市の木質化を中心に、空地活用や歩道拡幅、ベンチ設置を実験。まちづくり構想に描いたグリーンクロス実現を中心に、豊かな公共空間への大幅な転換を目指す。


 

5. まとめ

 

最後に、村山准教授に議論のまとめを行っていただき、参加者の皆様で記念写真を撮りました。

ご参加頂きました皆様、ありがとうございました!

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