N2/LAB 錦2丁目エリアプラットフォーム

ナビゲーションメニューを開く
Loading...
2022.12.20

#7気候変動その3 N2/Labワークショップ 報告

日時:2022年12月14日(水) 18時30分 ~ 20時
場所:オリマチNISHIKI スペース七番 + オンライン
主催者:N2/LAB(錦二丁目エリアプラットフォーム)
テーマ:「気候変動その3」
【コーディネーター】東京大学都市計画研究室

 

前回、「気候変動その2」のワークショップでは、将来の気候変動に適応するための錦二丁目の都市デザインを行いました。今回は、そのときの成果モデルを対象に温熱環境シミュレーションを実施した解析結果を東京大学都市計画研究室よりご紹介いただき、今後のまちづくりに向けたディスカッションを行いました。

前回のワークショップの報告はこちらhttps://n2-lab.jp/report/report-37008


プログラム
【第1部】 温熱環境シミュレーション報告 発表:山崎潤也(東京大学)
・第1回・第2回気候変動ワークショップの振り返り
・3D都市モデルと解析ソフトの紹介
・ワークショップ成果モデルの温熱環境シミュレーション結果の紹介
【第2部】 パネルディスカッション 司会:村山顕人(東京大学)
■パネリスト
・森田紘圭(錦二丁目エリアマネジメント)
・堀田勝彦(錦二丁目まちづくり協議会)
・河崎泰了(株式会社竹中工務店)
・山崎潤也(東京大学)
議題①:これまでの3回のワークショップの感想と解析結果をみた第一印象
議題②:解析結果を踏まえた都市デザインの改善案、気候変動適応の新たなアイデア
議題③:模型を使ったワークショップや温熱解析は錦二丁目のまちづくりに活用できるか?


 

【第1部】 温熱環境シミュレーション報告 発表:山崎潤也(東京大学)

 

第1部では、東京大学の山崎潤也研究員にご発表をいただきました。まずは、前回「気候変動その2」のワークショップで参加者の皆さんにご提案いただいた都市デザインの成果を振り返ります。前回のワークショップでは参加者22名が3つのグループに分かれ、錦二丁目の「7番街区会所」「袋町通り」「長島町通り」をそれぞれ担当しました。

■「気候変動その2」のワークショップ(9/10-11)での都市デザインの成果

 

続いて、これらの都市デザインを対象として温熱環境シミュレーションを実施した結果をご紹介いただきました。前回、皆さんに作っていただいた都市デザインの模型を3D上にモデル化し、専用の解析ソフトを使うことで、錦二丁目の夏季の環境を再現することができるのです。

このシミュレーションにはCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)という理論を使っており、3D上のモデルにおける気体や流体の動きを再現することが可能です。今回はアドバンスドナレッジ研究所のFlowDesignerという解析ソフトを利用しました。

■錦二丁目の都市デザインモデルを対象とした温熱環境シミュレーション結果
(2022年8月5日12:00の表面温度)

 

続いて、皆さんにご提案いただいた場所を細かくみていきます。都市デザインの前後を比較することで、それぞれの暑熱対策がもたらす効果を確認することができます。ここでは、比較のための指標としてWBGT(暑さ指数)を使っています。WBGTとは熱中症のリスクを測定するための指標で、31℃以上となると「危険」と判定されます。

第一に7番街区会所では、夏の会所空間を快適にするためのビオトープの設置、親水空間の設計、地面の木質化などをご提案いただきました。その結果、地面の表面温度が1日を通して下がり、WBGTが31℃を超える時間帯が少なくなることが示されました。

 

第二に袋町通りでは、現在の道路空間を再配分して歩道を広げ、街路樹の再配置や10番街区の建物更新を通じた新たな日陰空間をご提案いただきました。その結果、直射日光が遮られる午前中において特に効果が大きく、WBGTが大きく下がっている様子が示されました。

 

第三に長島町通りでは、繊維問屋街として発展した錦の産業を活かしたカーテンのかかる歩道空間などをご提案いただきました。その結果、正午の時間帯に直射日光を遮るものが少ない南北方向の歩行環境が大きく改善され、特に12時前後においてWBGTが4℃近く下がっている様子が示されました。


 

【第2部】 パネルディスカッション 司会:村山顕人(東京大学)
パネリスト:森田紘圭(錦二丁目エリアマネジメント)、堀田勝彦(錦二丁目まちづくり協議会)、河崎泰了(株式会社竹中工務店)、山崎潤也(東京大学)

 

第2部では、第1部でご紹介いただいた温熱環境シミュレーション結果をもとに、今後の錦二丁目のまちづくりに向けたディスカッションを行いました。3つの議題に対し、4名のパネリストに加えて参加者の皆さまからも幅広くご意見をいただきました。

 

【 議題①:これまでの3回のワークショップの感想と解析結果をみた第一印象 】

●2回目のワークショップ(9/10-11)が特に印象的だった。実際に街を調査することで局所的な暑さを肌感覚で知ることができ、細かな物的環境による影響の大きさに気づくことができた。
●CFD解析の技術を活用し、温熱環境の時間変化を街のプランニングに落とし込めると良い。時間帯によって日陰が落ちるところ、遮るものがなく日差しがさすところなどを考慮できると面白い。
●CFD解析ではアーケードによる効果が明確であったが、アーケードの設置においては道路側まで柱を出してはいけないなどの制約が多い。そのような中で道路拡幅などの適応策を1つ1つ検討していくのは面白そう。
●ビル風によって冷たい風が強くなる様子など、冬の環境にも関心がある。夏と冬の双方のシミュレーションを進めていく必要がある。

 

【 議題②:解析結果を踏まえた都市デザインの改善案、気候変動適応の新たなアイデア 】

●都市デザインに向けては日陰の創出や緑化などが中心になってくるが、どうしてもアーケード・街路樹・緑化・木質化以外のオプションが現時点で少ない。例えば建物のファサードに制御機能を入れて時間帯別に角度を変えるなど、先進技術を取り込んでいけると興味深い。
●アーケードの下は、夏は快適だが冬は寒い。夏は涼しい路地を歩き、冬は陽のあたる表通りを歩くという提案が考えられる。それに向けて路地の歩き心地を向上していってはどうか。
●緑化やビオトープなどの個々の適応策の組み合わせによる相乗効果が解析によって明らかになると、まちづくり関係者への説得力が増すのではないか。
●FD解析では駐車場を緑化した効果が大きいように見えた。街路全体の大きなスケールよりも駐車場など小さな部分のデザインから考えていくことも重要。

 

【 議題③:模型を使ったワークショップや温熱解析は錦二丁目のまちづくりに活用できるか? 】

●まちづくりの前提として、居住者や就業者などターゲットを明確にして議論する必要がある。その上でCFD解析の結果は視覚的にわかりやすいため、各方面への提案の根拠になり得る。
●空間的な議論の度にCFD解析を行うのは労力的に難しいため、シミュレーションの結果に基づいた暑熱適応のガイドライン(地域版)をあらかじめ用意できると良い。その上で、1回目のワークショップ(2/22)のように街の課題を共有できる機会が設けられるとより良い。
●まちづくりにおいては生物多様性への配慮も重要である。その際、それぞれの場所で植物が生育できるかを議論する上でも今回のCFD解析の技術が活用できそうに思う。
●空間的なシミュレーション技術はCFD解析以外にもあり、それらの技術をまちづくりに落とし込む一例として今回のワークショップが位置付けられると今後の展開に期待ができる。

 

今回ご紹介いただいた解析結果、および多様なご意見は今後のまちづくりに存分に活かしていきたいと思います。ご参加・ご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました!

レポート一覧に戻る Report

Related Posts 最新の投稿

Category カテゴリー

Date 投稿日

ページ上部へ
Loading...