#8気候変動その4 N2/Labワークショップ報告
日時:2023年9月19日(火) 13:00~17:30
場所:スペース七番(現地開催)
主催:N2/Lab(錦二丁目エリアプラットフォーム)
テーマ:「気候変動その4:気候変動×都市デザインワークショップ②」
【コーディネーター】東京大学都市計画研究室
前回の「気候変動その3:気候変動×都市デザインワークショップ」では、将来の気候変動に適応するための錦二丁目の都市デザインを行いました。今夏はそのときのアイデアをもとに適応策の実証実験を行い、その効果を体感・実測した上で具体的な施策導入場所を議論するワークショップを行いました。今回も現地開催とし、24名の方にご参加いただきました。
■気候変動その3の報告はこちら:https://n2-lab.jp/report/report-37094/
■適応策実証実験の報告はこちら:https://n2-lab.jp/report/report-37363/
プログラム
【第1部】気候変動に適応するまちづくりのためのレクチャー
【第2部】暑熱適応策の効果の測定・人流の観測
【第3部】暑熱適応策の導入箇所に関する議論
【第1部】気候変動に適応するまちづくりのためのレクチャー
(司会:東京大学都市計画研究室 村山顕人准教授, 修士2年福山遼平)
はじめに、気候変動適応のまちづくりに向けて2名の講師にレクチャーを行っていただきました。
◆「錦二丁目地区の概要と名古屋の夏の気候」 森田紘圭さん(錦二丁目エリアマネジメント株式会社)
森田さんからは名古屋と錦二丁目地区の歴史とこれまでのまちづくり活動、そして名古屋の夏の暑さについて解説していただきました。まちのデザインをしていく上で、地域の文化や資源を理解することが重要です。
◆「気候変動に適応する都市デザインに向けて」 山崎潤也研究員(東京大学都市計画研究室)
山崎さんからはまちなかの暑さ対策の考え方や先進事例、また錦二丁目地区を対象とした温熱環境シミュレーションの結果について解説していただきました。人間がどのように暑さを感じるのか理解することで、効率的に対策を導入することができます。
【第2部】暑熱適応策の効果の測定・人流の観測
第2部では参加者が6つのグループに分かれ、担当場所の現状と課題を調査するフィールドワークを行いました。ここでは、実証実験として設置している製品を含む6ヶ所の暑熱適応策を対象に、それぞれの効果を体感・実測しました。
まちなかの温熱環境調査では、WBGT計とサーモグラフィーカメラを使いました。WBGTとは暑さ指数とも呼ばれ、「気温」「湿度」「放射量」から計算される熱中症リスクの目安となる指標です。またサーモグラフィーカメラでは写したものの表面温度を測定することができます。適応策の有無による各指標の数値の違いを確認することができました。
フィールドワークの終了後、グループごとに温熱環境、物的環境、人流などの調査結果を整理し、最後に全員に向けて発表していただくことでまちの課題を共有しました。
【第3部】暑熱適応策の導入箇所に関する議論
第3部ではこれまでの調査結果をもとに、各グループが担当場所を対象に暑熱適応策の導入箇所について議論を行いました。ここでは暑熱の改善効果に加え、コスト制約や管理体制など具体的な運用方法についても考慮しながら検討を進めました。
さいごに、議論の成果をグループごとに発表していただきました。各グループとも特色ある素晴らしい提案をしてくださいました!
■袋町通(西2ブロック)
直射日光を受ける北側のビルに2m幅のオーニングを設置し、上部方向の暑熱対策を実施。歩道は保水ブロック化、車道は歩道に面する一部を遮熱ブロック化、沿道の駐車場も同様に歩道に面する一部を緑化することで、導入費用を抑えつつ、歩行者の暑熱環境の改善に効果的な提案をしていただきました。
■袋町通(東2ブロック)
中央の交差点付近に設置するアーケードには太陽光パネルを設置し、ミストを運転するための電気を発電するなど、各適応策の設置後の運用方法についても具体的に検討。各交差点付近には歩行者が自由に利用できる日傘を整備するなど、ハード・ソフトの両面から柔軟なアイデアを提案していただきました。
■長島町通(南2ブロック)
七番街区のマンションからスーパー、コンビニ、伏見駅までを結ぶ地域の主要な生活動線であることを意識。特に商店、飲食店が立地する西側には、日除けと雨除けを兼ねたオーニングを導入してメインの生活動線とする一方、東側は多くの街路樹を植樹しつつテントを設置するなど景観を彩る提案をしていただきました。
■長島町通(北2ブロック)
利用者の多いドラッグストア前にはアーケードを設置し、新たに植樹する9本の街路樹の足元には送風ファン付きのベンチを設置するなど、既設の木質ベンチと併せた憩いの空間づくりを検討。桜通の交差点付近では信号待ちの際の暑熱対策として保水性舗装を導入するなど、特に歩行者の多い長島町通に相応しい充実した提案をしていただきました。
■長者町通(中央2ブロック)
拡幅した歩道にはアーケードを設置し、沿道の平面駐車場には緑化を施すなど暑熱対策を行いつつ、歩行者天国となる休日にはイベントを開催するなど多くの人で賑わう空間を創出。沿道店舗により構成される組織がイベントを開催した収益で暑熱対策を行うなど、組織体制からマネタイズの面まで提案していただきました。
今回のご議論やご提案は今後のまちづくりに活かしていきたいと思います。ご参加・ご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました!