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2020.10.03

未来ビジョン研究会♯1

 

N2/LAB 未来ビジョン研究会♯1

日時:10月2日(金) 18時30分~19時45分

会場:zoom

 

2020年10月2日(金)未来ビジョン研究会の第1回目がオンラインで開催されました。新型コロナや気候変動など、地域をとりまく様々な社会リスクや課題を勉強しながら、地区としてどうあるべきかを村山先生、吉村先生に話題提供いただきました。当日は40名程の方にご参加いただき、錦二丁目地区の未来ビジョン策定への第一歩目を踏み出しました。

当日のプログラム


1. 未来ビジョンの趣旨と策定の進め方について

2. 話題提供「グローバル・リスクに適応する地域を実現するための5つのキーワード」

東京大学大学院工学系研究科 村山顕人  准教授

3. 話題提供「多様性を包摂する地域を実現するための5つのキーワード」

日本福祉大学国際福祉開発学部 吉村輝彦  教授


 

1. 未来ビジョンの趣旨と策定の進め方について



1-1.錦二丁目地区とN2/LABの概要について
錦二丁目地区はバブルの崩壊や空きビル・空地の増加などの困難な状況に対し、地域の人たちが何とかしようという気概をもち、様々な取り組みを行ってきました。なかでも「まちづくり構想」を地域の人たち自身でつくり、そこに書き込まれた内容を実践してきところが大きな活動の特徴になっています。こういった活動を持続的に続けていくため、錦二丁目エリアマネジメントという仕組みをみんなで立ち上げました。再開発の中にエリアマネジメント拠点を設け、2022年の春には本格的にスタートしていきます。
一方で、この地域は非常に変化の激しいところにおかれています。様々なビジネスの拠点ができたり、ハローワークや映画館もできたりと多様なまちに変化してきています。様々な変化を成り行き任せにするのではなく、ポジティブな方向に持っていけるよう活動をしていますが、地域の中のメンバーだけでは困難です。そこで、企業や様々な皆さんとのネットワークの中でポジティブな方向に変えていきたくN2/LABを立ち上げました。

1-3.未来ビジョンの趣旨と策定のすすめ方
未来ビジョンの趣旨と策定のすすめ方について説明させていただきます。

錦二丁目地区で特徴的なのは、地域主導でまちづくり構想をつくってきたということです。地域のみんなでつくってきた錦二丁目マスタープランでは2010年から2030年のビジョンとプロセスを描いています。今年の2020年はちょうど折り返し地点にあたります。振り返ると、ここで描いてきたことを少しずつ具現化してきました。
マスタープランではエリアマネジメントのことも書いていますが、そういった持続可能な地域の組織をつくることもなんとか実現させてきました。一方で社会制度や仕組みの疲労、気候変動などの新たなリスク、次々と社会に投入されていく技術の活用が求められており、こういった変化に対応することが重要になります。地域から押し上げられてきたビジョンだけでは、難しい問題や急速な変化に対応できないこともあります。そこで今回、錦二丁目未来ビジョンということで、様々な有識者の先生や新たなビジネスをつくっていく担い手に助けを得ながら、地域の人がこうありたいというビジョンと両輪で進めていくことにより、地域をさらに良くしていきたいと思っています。未来ビジョン策定にあたり、今回のような未来ビジョン研究会と具体的なテーマを設けたワークショップの両方を実施し進めていきたいと思います。


未来ビジョン研究会では、グローバルリスク、SDGs、技術革新、社会制度というところで社会ニーズを捉え、地域の変化と課題とを私たちの方から提供しながら、地域のコンセプト・将来をつくっていこうと考えています。ワークショップではテーマ毎に課題を設定し、皆さんにご参加いただきながら具体的なアクションをどんどん起こしていこうというような設計を考えはじめています。
未来ビジョン研究会は5回の開催を予定しています。錦二丁目エリアマネジメント株式会社、錦二丁目まちづくり協議会とN2/LABの事務局を中心とし、色んなゲストの方をお呼びしたり、事業会員の皆さまにお声がけしながらアクションを起こしてこうと考えています。

 

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2. 話題提供
「グローバル・リスクに適応する地域を実現するための5つのキーワード」
東京大学大学院工学系研究科 村山顕人 准教授

 

「グローバル・リスクに適応する地域を実現するための5つのキーワード」ということで話題提供をさせていただきたいと思います。グローバル・リスクと言っても非常にたくさんのリスクがありますので、本日はその中でも気候変動リスクや最近の新型コロナウイルス感染症に関係するお話をしていきたいと思います。

 

… 5つのキーワード …

1. 低炭素からSDGsへ
錦二丁目地区はこれまで低炭素モデル地区でもあり、環境のことを気にしてまちづくりを進めてきた。しかし、環境だけではなく社会・経済の持続性も考えなければならない。名古屋市は2019年にSDGs未来都市に選定され、ますます社会・経済の持続性についても考えるようになってきている。これからもそれが大事。

2. 気候変動リスクに適応する
気候変動リスクについて真剣に考える時代になってきた。それにどう適応するか。夏暑くて大変なら暑熱対策、気候変動によって雨の降り方が変わってきたため雨水マネジメントも課題。

3. 自然の力をつかう
錦二丁目では既に都市の木質化プロジェクトが活発に活動している。木だけではなく緑も上手く入れながらグリーンインフラをつくっていく。自然の力を使って色んなことを解決していくNature-based Solutionsが世界的に流行っているが、このようなアプローチが大事。

4. 自動車系土地利用に介入する
錦二丁目の16ha(ヘクタール)のおよそ40%は道路空間である。敷地側には駐車場もたくさんあり、要はコンクリートやアスファルトで覆われている土地が半分近くあるということ。こういう土地利用に介入していく必要がある。

5. 目に見えるモノをつくって効果を測定・提示する
既に錦二丁目では実践されているが、プラットホームができて、これがますます活発になるのではと期待している。

 

 

■ いまここに見えないグローバル・リスクに適応する ■

 錦二丁目を色んなことにチャレンジする実験の場として捉え、やっていく。その際いまここに見えないグローバル・リスクを意識する必要があると思います。SDGsを目標に色んな活動が展開されますけれど、その理由の一つがこれから顕在化する様々な課題、グローバル・リスクに適応することだと思います。

この図は世界経済フォーラムが出しているもので、横軸と縦軸があります。横軸は様々なリスクの発生可能性、縦軸はグローバルリスクの影響で、大きいものほど上にあります。これを見ると気候変動施策の失敗や極端な気候など自然災害系のリスクが発生可能性も高く、一度起こると相当な影響を及ぼすと認識されています。その他水不足や情報インフラの機能停止、昨日たまたま株の取引に関するハプニング(東京証券取引所のシステム障害に伴う株式売買停止)がありましたが、これも情報インフラの機能停止の一つです。世界を見渡すと、食糧危機や社会の不安定など様々な所で歪みが生じ、その歪みが市民の暴動に繋がって大混乱になっていたりします。それから感染症です。この図は新型コロナウイルス感染症が世界的に流行する前につくったものですので、発生可能性についてはそれほど高くありません。来年同じような図をつくると右上の方に上昇していくのではないでしょうか。

 

 

 

■ 都市のレジリエンス ■

  レジリエンスの日本語訳は色々ありますが、私は回復力・適応力といっています。

この図は、イギリスのロンドン市がResilient Strategy(レジリエントストラテジー)、都市のレジリエンス※を高めるための戦略を公式な文章としてまとめ公開しています。左側の主要な突発的ショックは、干ばつ、テロの攻撃、水害、異常気象、サイバー攻撃、インフラの故障、病気の世界的流行。これはCOVID-19を予言するような形でも書かれています。右側が進行性ストレスです。進行性ストレスとは、じわじわと起こっていく変化で、長期的にみると相当なストレスになっていくものです。社会的つながりの欠如や不平等、大気汚染、食糧セキュリティ、住宅アフォーダビリティと質、インフラの老朽化、健康と幸福の低さ、それからイギリスらしいですけれど、EUからの離脱。これらは明日急に起こるということではありませんが、じわじわと状況が悪化し、極限状態になると突発的なショックに変わることがあります。都市政策としては、リスクにきちんと対応していく必要があり、日本でも少なからず様々なことに対応していかなければなりません。

※いかなる進行性のストレスや突発的ショックがあっても、都市内の個人、コミュニティ、組織・事業者、システムが生き残り、適応し成長する能力

 

■ 様々な実験から社会を変え、グローバル・リスクに適応する ■

グローバル・リスクは非常に大きな課題ですが、これにどう対応するか。国や都道府県・自治体の政策や計画で動かしていくということもありますが、そのようなトップダウンの形はすごく時間がかかります。ですから最近は、地区スケールの様々な実験から規制、方針、プログラムを変えていくというアプローチにまちづくりのやり方が大きく転換しているように思います。錦二丁目のような低炭素地区やリビングラボなどの色んな形で、地区スケールでの実験が今世界中で起こっています。

 

■ エコな地区をつくる:ポーランドから全米そして世界へ ■


錦二丁目が低炭素モデル地区になったのは2014年ですが、実はポートランドのエコディストリクトのモデルがありました。様々な問題がありますが、その解決を地区スケールの取り組みからやっていくというものです。ポートランドは元々環境に優しい都市づくりで有名で、持続性の環境の側面から入っていったものです。これが全米展開するにあたり、場所によっては環境のことよりも社会的な問題、貧困や経済的な衰退の問題の方が大きくて、なかなかエコなんて言ってられない、そんな話できないという場所も多いと分かり、環境的側面からむしろ社会的、経済的側面をも含むような総合的な枠組みに変わりつつあります。


エコディストリクトの取り組みをやっていたメンバーの一人が、オーストラリア・ニュージーランドのSmartCitiesCouncilというところのBouncelabというシンクタンクをつくっています。彼が最近出したのが、このDIGITAL BENEFIT DISTRICTSです。最近COVID-19のパンデミックによってインターネットやデータの重要性が広く認識されるようになりました。これから発生する様々なリスクに適応するため、地区のスマート化も必要です。スマート化にしても地区のスケールからやっていく。最近日本でもスマートシティやスーパーシティなど言われていますが、何か変革を起こすのはやはり地区スケールからであると思います。
なぜ私がエコディストリクトをそんなに気に入っているのかというと、一体的に計画し、つくり直すことができないような既成市街地でエコ化に取り組むための枠組みが非常にわかりやすく、且つ日本の参加型まちづくりのカルチャーとも上手くマッチするようなものだからです。簡単に説明しますと、エコなまちをどうやってつくったらいいかというフレームワークがあります。とにかく組織化からはじめるんですね。まちをつくろうという機運を高めながらそれに賛同してくれる個人や企業、団体のグループをつくり、どうやったらこのまちがより環境的・社会的・経済的にも持続できるようになるかという手法や戦術を検討する。それから方針を定め、資金を確保する。資金ありきじゃないんですね。どこかから大きな補助金がもらえて、そのお金を使って何をやろうという話ではなく、やるべきことを先に決めてそれを実現するための資金調達をみんなで考えていくといった発想です。結果的には建物、インフラといったハードウェアのプロジェクトと人々の生活行動に関わるソフトな取り組みを上手く組み立てて、まちづくりを進めようといったことです。

 

一つ事例を紹介したいと思います。

 

■ミルベール・エコディストリクト・ピボット2.0


ミルベールというところの事例です。ペンシルベニア州のピッツバーグのすぐ近くの地区で、これは地区のビジョンです。6つのアイコンがありますが、これはそれぞれエネルギー、水、食糧、大気、モビリティ、社会的公正を示しています。注目していただきたいのは、エネルギー、水、食糧という人間の生存に不可欠な3要素をまず出して、さらに地区の大気、モビリティ、社会的公正という話もしているところです。こういった基本的な要素から組み立てていくという新しいタイプの計画だと思っています。

 

○エネルギー
既成市街地に新しいプロジェクトをうまく埋め込んでいくあるいはインストールしていくアプローチ。例えば太陽光発電では少し離れたところに発電所を設け、建物の屋上にはソーラーパネルをつくる。たとえ大規模な電力インフラが故障しても、代替インフラとして地域で最低限の電力を確保できます。

○食糧
どんどん発生する空地を都市農地に転換しそこで野菜を育てる。大人は皆働きに出てしまっていて、子供たちはファーストフードで食事を済ませたりお菓子ばかり食べているなどかなり厳しい状況です。野菜を育てるところから子供たちと一緒にやり、できた野菜は地元のレストランで調理し提供するという小さな経済もまわす取り組みです。

○水
このエリアは水害が起こりやすい地域ということで、雨をうまく処理しなければいけません。雨水が一時貯留されて多少は道路にしみ込み、吸収できない分はあとでゆっくり流すというグリーンインフラをつくっていく計画です。

○モビリティ
モビリティについては、車だけではなく自転車や歩行者、その他モビリティにも優しい街路につくりなおす。カヤックに乗り、川をつたって向かい側のピッツバーグの都心部へ働きに出るというような代替交通手段も確保する、そのための拠点をつくるということもあります。

○大気
公園を整備し自然の力で空気を浄化していく。建物の壁には浄化装置のようなものを付けています。

○公正
色んな人が住めるようなまちへ。

 


■ 錦二丁目へのエコディストリクトの考え方の適用 ■


実は錦二丁目の低炭素地区でもエコディストリクトの取り組みをかなり意識して組み立てています。様々な草の根的活動を通じて、まちが少しずつ良くなりエコ化していく状況があるように思います。

様々な事例をお見せしましたが、強調したいのは最初にあげた5つのキーワードです。以上で終わります。ありがとうございました。

 

グローバル・リスクに適応する地域を実現するための5つのキーワード
1. 低炭素からSDGsへ
2. 気候変動リスクに適応する
3. 自然の力をつかう
4. 自動車系土地利用に介入する
5. 目に見えるモノをつくって効果を測定・提示する

 

 

 

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3. 話題提供
「多様性を包摂する地域を実現するための5つのキーワード」
日本福祉大学国際福祉開発学部 吉村輝彦 教授

 

多様性をキーワードにどのようなことを話せば良いか考えていました。考えているプロセスを冒頭にお話したいと思います。

多様性というキーワードをおいた時、いろんなことが広がってくるように思います。まずはよくセットで語られる「包摂する-Inclusion-」。都市との関係でいうと、多様性こそが力になるという話もありますので「力/魅力」という観点、多様であることを力に「社会的創発」をどう進めていくかという観点もあると考えています。
今回はキーワードとして
この5つをあげたいと思います。

 

… 5つのキーワード …


1. コンヴィヴィアリティとしての共生社会

2. 中間的社会空間と関わりしろ(余白)のデザイン

3. 交差し、社会的創発が生まれる場づくり

4. 新たな日常の創出

5. プロセスデザインとマネジメント

 


いくつかのことをキーワード的にお話したいと思います。
僕は日本福祉大学で福祉分野の先生方と色々な議論をします。その中での一つのキーワードがこの「地域共生社会」という言葉で、いま厚生労働省を中心に議論されている概念です。これは元々2016年のニッポン一億総活躍プランの中で出てきた言葉ですが、子供、高齢者、障害者など全ての人々が地域、暮らし、生きがいを共に創り、高め合うことを目指しています。

 


その議論での大きな一つの柱は、新たな包括的な支援の機能等についてです。この中では3つのポイントがあげられています。

①断らない相談支援
②参加支援
③地域づくりに向けた支援

地域づくりの分野からの重なり合いをどのようにつくっていくかが課題として議論されています。地域づくりの事例として錦二丁目やまちの縁側的な取り組みがまさに融合的な事例になると思います。
多様性の捉え方の中で、これまでの狭い意味での福祉だけでなく、多様な人々が暮らしている中でどのような取り組みをやっていくことができるのか考える必要があります。
福祉サイドからのアプローチとまちづくり・地方創生サイドからのアプローチを重ね合わせ、出会い・学びのプラットフォームをつくっていくことが地域共生社会に向けて大切だという話が展開されていますが、まさにこのことはこれから考えるべき一つであると僕の中で整理しています。

 


今年度、厚生労働省は重層的支援体制整備事業を展開しています。この中でも多分野協働のプラットフォームという名前を使っていますが、色々な形で人々の暮らしの部分と重ね合わせながら様々な取り組みをしていくことが不可欠になってくるように思います。

他方でもう一つ、多文化共生という分野での「共生」の議論もおさえていく必要があります。これは国籍や民族など、異なる人々が互いの文化的な違いを認め、対等な関係を築こうとしながら共に生きていくことを定義としています。個人的には地域共生と多文化共生を切り離す必要はないと考えています。同じ共生というキーワードの中で、その地域に暮らしている、働いている、住んでいる人達の可能性をどう紡いでいけば良いのかという議論をしていくことは大事です。

これまでも実は似たような議論がありました。


LIFULL HOME’S 総研が「寛容社会」という冊子を3年程前に出しています。
寛容な社会を開いていくことで色んな人を包み込み、そこから何か新しいものを生み出していくことを大事にしていく必要があるのではないでしょうか。寛容性(トレランス)という言葉はクリエイティブ・クラス※の中でも登場します。共生社会を考えることは、個別の分野の中での議論ではありません。都市やまち全体のことを考えていった時に共通するフレームワークがあると僕自身の中では思っています。

※経済学者・社会科学者であるリチャード・フロリダによってアメリカの脱工業化した都市における経済成長の鍵となる推進力と認識された社会経済学上の階級のこと

 

そういうことを背景に、先鋭的にやっているところとして紹介したいのが、

渋谷区の基本構想で書かれている「ちがいをちからに変える街」というものです。この中では、ダイバーシティ&インクルージョンを一つの大きなテーマ・背景にしていますが、これからの未来を見据えた時、どのようなアプローチをしていくのかをもっと考えていく必要があるように思います。

 

錦二丁目まちづくり協議会のマスタープランでも既に共生文化や共生空間という言葉が出されています。ただ、その時の状況と社会が少し変化していることもありますので、それを受け、新たな意味や意義を見出していくことが大事だと思います。

その上で中間的社会空間と関わりしろというのは、それぞれ違っている・異なっている人々をどのように巻き込み、包み込んでいくのかだと思いますが、


今ある仕組みや制度は、そういった個別状況に対応するためではなく、どちらかと言えば安定的な基準で対象を選別できる定常的な文脈を前提としてできています。先程村山さんからお話いただいたボトムアップ・実験からはじめていくというルールの話はまさにこれの対極だと思います。

 

僕は、今、日本福祉大学の穂坂光彦さんと一緒に、「中間的社会空間」という考え方に関わる議論をしています。行政や市場などある種制度的なもので動く部分はそれでできるかもしれませんが、そうでないところがとても大事です。オフィシャルなのかアンオフィシャルなのか、フォーマルなのかインフォーマルなのかはありますが、間を繋ぐ仕掛けをどうつくっていくかが鍵なのではないかという議論を共感を持ってみています。
制度か非制度かという二項対立的な議論ではなく、場面場面で、うまく制度化する、それをフィードバックし、また、インフォーマルに非制度の中で議論していくことが、これからもっと必要なのではないでしょうか。

 


知多市の朝倉団地でもそのようなことを意識しながらいくつかの取り組みを行ってきました。ハードを先に整備し、何かイベントをやるみたいなアプローチでもないだろうし、ミッションを共有した組織を先に作ってやるわけでもないだろうし。むしろ、包摂的な場面をつくりながら、共有できるビジョンを紡ぎ出していくアプローチをすることが大事なのではないか。同質的・等質的なことを前提とした仕掛けではそうならないので、多様性・異質性を前提とし、ステップを重ね、色々なことをやっていく必要がある。そのように意識した取り組みをしていくと、結果的に、ゆるやかな形で人が集まりました。
朝倉でもっとやりたかったけどできていないのが、

モバイル屋台のような試行的な取り組みです。従来排除されそうな人たちや無意識的にアクセスできないような人たちをどう巻き込んでいくか考えた時に、実験的な取り組みで色んなフックをつくりながらやっていく必要があると思いました。錦二丁目の縁側的なところも、畏まらず常に開かれ、何の用もないけどふらっと行けるようなものになると良いですね。

 

社会的創発がフックを作りながら、様々な人のアイデア、知恵、異なる価値観をベースにしたものをうまく束ねてことが大事ということで、社会的創発は鍵なんじゃないかなと思います。その観点から色んな自治体の取り組みを見ていると一つ気になるものがありました。

川崎市が2019年3月に出した「これからのコミュニティ施策の基本的考え方」は気になる考え方を出しています。これからは市民創発が大事ということを打ち出しているのは面白いと思いました。実際にどうかということは別問題で、こういう考え方を取り入れて、見せているのは大事です。僕がこの中でもう一つ気になったのは、今の考え方を絵にしていることです。空間的にどうやっていけば良いのかという考えを分かりやすく打ち出しています。


新たな日常の話は、一過性の取り組みとしてやるのではなく、文化や日常として根付くものとしてやっていく必要があると思います。それを根付かせていくためのプロセスをどう考えていくのかが大事です。
それを考える上で注目している事例として、

安城市の都市計画マスタープランを紹介します。市民や民間事業者が主体となって短期的な“実験的取組”を実践し、積み重ねていくことでこれからのあり方を模索することが大事という、タクティカルアーバニズムを明確に謳っています。「まちをあそびたおそう」と、行政からいっていくのは面白いと思います。
まちの相性と合っているか、うまくいかなかったら他の手段も、といった試行を重ねることが大事だと思います。

本日のまとめとしては以上です。ご清聴ありがとうございました。


多様性を包摂する地域を実現するための5つのキーワード

1. コンヴィヴィアリティとしての共生社会
2. 中間的社会空間と関わりしろ(余白)のデザイン
3. 交差し、社会的創発が生まれる場づくり
4. 新たな日常の創出
5. プロセスデザインとマネジメント

 

 

 



国内外の様々な事例を踏まえながら、先生方には非常に密度の濃いお話をしていただきました。
本日は村山先生と吉村先生に話題提供をいただきましたが、
次回話題提供いただく中村先生、藤原先生にも自己紹介いただきました。

 

 


名古屋大学大学院工学研究科 
中村 晋一郎  准教授より

名古屋大学の中村です。錦二丁目との繋がりということでいうと、今回が実は初めてと言っていいかもしれません。ただ、名畑さんや森田さんとは色んなところで活動を一緒にさせていただいておりまして、今回この会に関係することができ、非常に嬉しく感じております。普段は名古屋大学で水資源や国土形成についての研究をしています。どうぞよろしくお願いします。


愛知県立大学教育福祉学部 
藤原 智也  准教授より

こんばんは。愛知県立大学の藤原です。正式な形で錦二丁目に関わるのは今回が初めてですけれども、延藤先生や名畑さんの活動でご一緒させていただく機会がここ4年くらいありました。私は元々美術が専門ですけれども、美術に関する文化政策や教育政策の研究、場合によっては実践的な研究もしております。そんな中、どのような形でアートやデザインがまちづくりに貢献できるか関心を持って関わらせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 

 

 


– 錦二丁目まちづくり協議会の堀田さんと河崎さんからも一言いただきました。

 


錦二丁目まちづくり協議会 
堀田さんより

錦二丁目まちづくり協議会で会長をしております堀田です。なばちゃんの話も もう何十回も聞いたおかげで、昔やったまちづくり構想と今回やろうとしているものがどんな軸で動いていて、どこを目指していくのかが何となく分かってきた気がします。今回、公共空間を活用した歩道の活用をしているんですけれども、公共空間を使って自分たちのお店がよろこんでいる状態になると、色んなことでまちの人の言うことを聞き、一緒に歩もうというふうに変わっていく。実際にまちの人を巻き込み、良かったなという実体験を与えながら進んでいけるようなことがここで考えていければいいなと思います。

 

 


錦二丁目まちづくり協議会 
河崎さんより

錦二丁目まちづくり協議会の副会長をやっております、竹中工務店の河崎です。まちづくり構想から色々と携わっていますけれど、限られたメンバーでは限界がありまして。今回多方面の企業の方と意見交換し、様々なアイデアが出てくることを楽しみにしております。よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

会のおわりに
本日の話題提供を聞いて

 都心において小さな経済も大きな経済も色々な層が共に居ることのできる公正と、コンヴィヴィアリティのお二人のキーワードを横繋ぎにしながら興奮して聞いていました。開かれた場を担保し続けることで地域の多様性を持続することが大事ですね。
また、リスクに対して「何とかする」力を私たちの地域は持っているか?ということ。コロナが起き、飲食店のために歩道を活用したテラス営業の申請にもまちぐるみでチャレンジしましたが、もっと力をつけていきたいと、先生方の話を聞いて思いました。
これから皆さんよろしくお願いします。(錦二丁目エリアマネジメント株式会社:名畑)

 

未来ビジョン研究会♯1終

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